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【元・日本一短い鉄道】紀州なのに本社は東京?謎の短路線、紀州鉄道に乗車してきた(2022.8.16)

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日本一長い路線バス・八木新宮線を完乗した翌日、同じ和歌山県は御坊市を走る紀州鉄道に乗ってきました。日本一シリーズ、というにはちょっと強引ではありますが、この紀州鉄道は以前「日本一短い鉄道路線」でした。

▽▽前回の日本一長い路線バス・八木新宮線の記事はこちら▽▽

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八木新宮線の50分の1の時間で完乗

紀州鉄道は、和歌山駅から電車で1時間ほど南下した、御坊市を走る路線です。区間はJRとの乗り換え駅である御坊駅から西御坊駅までのわずか2.3km。完乗にかかる時間はわずかに8分です。前日に乗車した奈良交通バス・八木新宮線の所要時間が6時間32分(定刻の場合)ですので、渋滞による遅延を考慮すると実に50倍以上の開きがあります。

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現在、紀州鉄道は厳密には日本一短い鉄道路線ではありません。2002年に千葉県で芝山鉄道が開通すると、こちらが全長2.2kmとなり日本一の座を譲ることになりました。ただし芝山鉄道については線内完結の列車が全くないため、実質的には現在でも紀州鉄道が最短と言っても差し支えはないでしょう。

なぜこんなに短い鉄道路線が存在するのでしょうか。それは市街地からやや離れた御坊駅と中心市街地を結ぶためでした。JR(国鉄)の駅が中心市街地から2kmほど離れている、というのは日本の多くの都市で見られる事象です。

そのあたりの公式的な部分はまたどこかでコラムとして書ければと思いますが、御坊市についても商店街は終点の西御坊駅のあたり、そして終点の1つ前には市役所前駅があります。

改札なし、切符なし

そんな紀州鉄道に乗るため、御坊駅へとやってきました…が、券売機はJRのもののみ。え、じゃあどうやって紀州鉄道に乗るの?というところですが、途中の紀伊御坊駅以外では、乗車券を買う必要はありません。というか、買えません。そのまま乗車してください。なお御坊駅から乗車の際は、JRの係員さんへ紀州鉄道に乗車する旨を申告して改札を通してもらいます。

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紀州鉄道のりばの入口にICカードの機械は置かれていますがこれはあくまでJRの出場用です。バスと同じように、下車時に運賃を精算します。ちなみに整理券はありませんので乗車駅は自己申告です。まあ、誰がどこから乗ったかはきっと、運転手さんは把握しているはずですので不正はしないでね。

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運賃は全線乗り通しても180円です。

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乗車時間は8分ほどですが、シートはふかふか。昔ながらのボックスシートでのんびりと移動です。

学問じゃないよ、学門だよ

ここからは、紀州鉄道の各駅をご紹介。

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御坊駅の隣にあるのが、学門駅です。和歌山県立日高高校の前にあります。学校の門の前だから学門です。学問じゃありません。名前が名前なのでお守りが売れていますがこちらは無人駅。学門駅グッズはお隣・紀伊御坊駅で買うことができます。

その紀伊御坊駅は、紀州鉄道の職員が配置されている唯一の駅です。紀伊御坊駅では紀州鉄道のグッズが買えるほか、乗車券の購入も可能です。

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線内の乗車券はもちろんのこと、なんと北は大阪駅、南は新宮駅までのJR連絡乗車券を販売しています。

市役所前駅を通り、あっという間に到着するのが終点・西御坊駅。

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全ての駅が味がある紀州鉄道ですが、その中でも西御坊駅の木造駅舎は見ものです。こちらも無人駅ではあるものの、駅舎内で写真が展示されていたり、「日本一短いローカル私鉄」という看板が掲げられたりしています。

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日本一短いローカル私鉄、確かにその肩書なら、今でもいけそうです。

西御坊駅に降りたら、ぜひ駅前の松原通り商店街も歩いてみてください。

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このアーチ、素敵じゃないですか??

紀州鉄道はの本社は東京

乗ってみると素敵なローカル線である紀州鉄道ですが、その収支は全国最低と言われています。しかし、これまで具体的な廃止の話は出たことがないそうです。その理由の一つに「鉄道事業以外の本業があるから」ということがあります。

紀州鉄道株式会社の会社概要を見てみましょう。鉄道事業の上に、会員制リゾート事業、ホテル事業、分譲別荘事業があります。つまり紀州鉄道は不動産会社なのです。

鉄道会社が不動産事業を展開することは珍しくない、というより、不動産事業を持たない鉄道会社はおそらくどこにもありません。例えば駅のコンビニや立ち食いそば屋などの賃料、自転車置き場の利用料なんかも、鉄道会社の貴重な収入になっているはずです。

ですが紀州鉄道についてはちょっと事情が異なるようで、「不動産事業への信用を高めるために鉄道事業を買収した」ようです。実際のところは気持ちの問題のような気もしますが、鉄道事業を廃止した会社が「○○鉄道」という屋号を残したまま別事業を展開する事例は各地で見られることから、あながち珍しいことではないのかもしれません。

なお、紀州鉄道株式会社の本店は東京都中央区にあり、全国各地にホテルや別荘事業を展開しています。事業案内を見ると、鉄道事業のあっさりした紹介に思わず笑ってしまいます。

和歌山県に行ったことがない人でも、紀州鉄道の施設にお世話になっている方はいるかもしれません。鉄道としては激渋な存在ですが、こんな形で存続されているのもそれはそれで面白いと思います。

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