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【まち歩きの視点2】レンタサイクルのある街、ない街~長野市と新潟市を例に~

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このブログではこれまで、日本全国、そして時には海外も含めて、様々な場所の旅やまち歩きについて触れてきました。まちにはそれぞれの個性がありますが、一方でそうしたまちの特性を「法則化」していくことで見えてくる面白さもあると考えています。

身近なまちを取り上げながら、記事を読んでくださる皆さんの住むまちでも使えるかもしれない「まち歩きの視点」を、様々なパーツから紐解いていきたいと思います。

2回目の今回のトピックはレンタサイクル。まち歩きの話なのになぜレンタサイクル?と思うかもしれませんが、「(普通の)自転車で気軽に走れるかどうか」というのは、まちの地形や市街地の構造を観察するにあたって大きなヒントになります。どういうことか。詳しく考察していきましょう。

※正直に申し上げると、両市のお住まいだったりゆかりのある方からすれば「そりゃそうだろ」という内容かもしれません。ただ、そうした「当たり前」をあえて言語化する試みだとご理解いただけたら幸いです。

 

レンタサイクルが見当たらない長野駅

まずは、長野駅周辺におけるレンタサイクルの環境について見ていきます。とは言っても、長野駅に降り立ってすぐにレンタサイクルを見つけられる方はおそらくいらっしゃらないのではないかと思います。

「ながの観光net」のQ&Aにも、長野駅周辺でレンタサイクルを利用できる場所は「宮本商会」さんだけが案内されています。この宮本商会さん、実際通ってみると分かるのですが、まちの自転車屋さんという感じで、どちらかといえば地元の方の自転車修理とかがメインだろうな、という印象です。

宮本商会

一応お店の看板にもレンタサイクルの表記はありますが、webサイトなどもないようですし、観光の方が使うのは難しいのではないかなと思います。

ちなみに、2022年春の善光寺御開帳の際にはドコモやJR東日本などの協業で長野駅でのシェアサイクルが展開されましたが、これはあくまでも2か月間の実証実験であり、すでに終了しています。

www.yomiuri.co.jp

観光案内所でレンタサイクルを扱ったり、シェアバイク等の業者が参入しないのか?と思うかもしれませんが、長野駅周辺に関しては観光としてのレンタサイクルの需要はないと考えるのが自然です。

その理由については、次の次の章で解説します。

"再利用レンタサイクル"が便利な新潟駅

一方で、新潟駅周辺ではレンタサイクルが観光の移動手段の一つとして広く案内されています。

具体的には、放置自転車を活用した「にいがたレンタサイクル」と、電動アシスト自転車を利用できる「にいがた2kmシェアサイクル」があります。

以前新潟を訪れた際に「にいがたレンタサイクル」を利用しましたが、新潟駅から駅前の駐輪場までの案内が分かりやすく示されており、観光目的でも利用しやすいという印象を受けました。

新潟駅万代口にあるレンタサイクルの案内

「にいがたレンタサイクル」は放置自転車を活用したサービスということもあり料金も安く(500円/6時間以内)、需要もそれなりにあるのではないかと推測されます。

もとは放置自転車なので、形状は様々

長野市と新潟市でレンタサイクルを取り巻く環境がこれほど異なるのはなぜか。その要素の一つが、両市の地形にあると考えられます。前置きが長くなりましたが、ここからは地形図を見ながら、観光の動線を考察します。

 

ポイントは「"回遊コースの中に"高低差があるかどうか」

先述の新潟訪問の際、自転車を借りて
新潟駅~万代シティ~上古町商店街~朱鷺メッセ~沼垂テラス商店街~新潟駅
というルートで市内を巡りました。

このルート、Googleマップで調べると最短経路で結んでも8km強となり(実際はもっと移動している)、自転車があれば嬉しい距離感です。

さらに、同じエリアの標高を見てみます。ここでは、インターネット上で閲覧可能な国土地理院の地理院地図を活用します。

maps.gsi.go.jp

こちらを使って新潟駅周辺の標高を調べると、ほぼ全体が標高5m以下であり、しかも土地の凹凸もほとんどありません。このような地形であれば、10km近くの距離を電動アシストのない自転車で走ることになっても特に苦にはなりません。

新潟駅周辺はほとんど標高5m以下

一方、長野駅周辺はどうでしょうか。

そもそも長野市は市街地の標高が割と高く、長野駅周辺は最低でも標高340m以上はあることが分かります(先ほどの新潟市の地形図とは色分けに用いる数字がそもそも異なっているので注意です)。

長野駅~善光寺で約50mの高低差 ※一部筆者にて追記

その中でも、長野駅と善光寺や長野県立美術館といった観光スポットには50m近くの標高差があります。しかも、善光寺に近づくほど勾配が急になっていることが読み取れますね。これは近辺の高校生も多くが自転車を漕ぐことを一旦諦めるレベルです。

ここまで露骨に勾配があると、自転車移動が向かないことは明らか。さらに言えば長野駅~善光寺の距離は2km程度なので、自転車を使っても途中で押さなければいけなくなるならば、歩いた方が楽な可能性さえあります。

こうした観察をすれば、長野駅でレンタサイクルを運営する事業者が現れない理由がよくわかりますね。ちなみに善光寺の参道(車道乗り入れ禁止区域)については自転車の乗り入れも不可ですし、それ以前に駐輪場がありません。隣の城山公園についても、駐輪場はほとんどありません。それでも、(観光という観点では)特に困ることはないのです。これも地形を見れば納得です。

城山公園

 

地形を知ることは、まちの"動き"を知ること

以上、長野市と新潟市の地形とレンタサイクルという視点で見てみました。自転車という乗り物は、ある意味では地形の凹凸を一番感じられる移動手段です。地形を知ることによって、そのまちの人々の動きを感じることができるかもしれません。

お城や寺社仏閣などは特に、市街地よりもやや標高が高い場合も珍しくありません。そうしたランドマークを軸にまちを観察してみるのも、面白いと思いますよ。

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▽▽「まち歩きの視点」シリーズ過去記事はこちら▽▽

www.sanmuofmusan.com