ライブハウスがなければライブはできない。ライブをするバンドがなければライブハウスは成り立たない。
この当たり前のはずの環境が今、揺らいでいます。
3月12日、あるバンドが、自分たちが日々お世話になっているライブハウスを救うべく、感染症対策を徹底的に行ったうえで緊急無料ライブを行う、とのツイートがタイムラインに流れてきました。
死ぬほど考えました。3/20から僕は僕の意思でライブします。マスクや会場の除菌換気全開ライブ当日はメンバー全員基礎体温も測ります。実は混んでる飲食店にマスクなしで行っちゃってる様な音楽好きがいたらおいでよ、手洗いの仕方から未来の音楽のことまで僕らのこれからを一緒に考えよう pic.twitter.com/GhTSVS45Ti
— 篠塚将行(それでも世界が続くなら) (@sino_sstn) 2020年3月12日
今決まりました。公式より先に僕から。3/21、ワンマン翌日、神戸公演中止の日、名古屋30人限定で鑪ら場救済ワンマン入場無料でやります
— 篠塚将行(それでも世界が続くなら) (@sino_sstn) 2020年3月12日
2020年3月21日
それでも世界が続くなら
緊急入場無料ワンマンライブ
「僕らの鑪ら場を守れ」
場所:名古屋鑪ら場
入場無料 17:00〜
予約https://t.co/BIVRKgn8WC pic.twitter.com/fn8j4QAfaB
バンドの名は、「それでも世界が続くなら」。
それでも世界が続くなら official web site -News-
正直、今までほとんど聴いたことのないバンドでした。Google Play Music のシャッフルでたまたま流れたくらいかな。
ですが、ボーカルの篠塚さんの言葉に強く心を惹かれるものがありました。目の前にある危機をはっきりと伝えつつ、でも決して誰かを攻撃することはなく、しかし熱い気持ちが伝わってくる言葉の数々。
気付けば、少し前まで名前も知らなかったバンドのワンマンライブのチケットを、申し込んだ自分がいました。
会場は、名古屋市千種区にあるライブハウス「鑪ら場」。
ぜひホームページに載っている写真を見てください。
小さな空間に2段ベッドみたいに客席が広がり、なんとなくゲストハウスのドミトリーみたいな感じもしますね。
この写真を見て上段に行こうと決めました。
というわけで、東京駅から新幹線に乗ってやってきました。
それにしても空いていましたね、新幹線。
鑪ら場は、住宅街の中、マンションの地下?みたいな、一見するとライブハウスとは思えない場所にあります。
定員が30人ほどの小さなライブハウス。この日の公演はSold Out です。
階段を降りた先にすぐステージが広がります。
ドリンクチケットを購入し、早速席へ。
予定通り2階席へ上がります。
なかなか良いアングルだ‥。初めて見るバンドなので、ゆっくり見るには最高の環境です。
鑪ら場はご飯が美味しいと聞いていたので、早速カレーも注文。
会場着くまで、「ライブハウスでご飯が美味しいってどういうこと‥?」って思ってましたが納得。
ライブハウスなのに唐揚げを揚げる音が奥から聞こえてくるのもなかなか味があります。
2階席はこんな感じ。
なんと、畳に座布団なんですよね。こんなライブハウス初めてなんだけど。
ここで足を伸ばして、壁にもたれかかって、ご飯とお酒を楽しみながら音楽を聴く。あの‥最高じゃないですかこれ‥。
アコースティックじゃない時ってどうなんだろう。靴脱いで畳でスタンディング?それはそれで面白そうだな。
カレーを食べ終わったあたりで、いよいよライブがスタート。
この日はアコースティック仕様。序盤はMCを挟まず淡々と進行していきます。
(完全に初めてだったので普段のライブの様子を知らないためなんとも言えませんが)、最初はなんとなくエンジンがかかっていないのかな?という印象。
しかし、最初のMCで「今日は調子が悪い」という発言があったところから状況が一変。はっきりと調子が悪いと言って吹っ切れたのかは分かりませんが、ここからボルテージが一気に上がっていきました。
個人的な前半のハイライトは「イツカの戦争」。先述のツイートを見てそれせかの曲を聴き始めて真っ先に心を掴まれた曲でした。
一番聴きたかった曲が聞けた嬉しさもありますが、それ以上に温かい出来事が。
曲の終盤にソワソワしだすドラムの土谷さん。どうやら途中でスティックを派手に折ったようです。
「どうしよう…」という感じになっていたところにライブハウスの店長さん登場。スティックを回収し、数分後に戻ってきました。割り箸とガムテープ?で補強し、再開。たったそれだけなんですけど、店長さんの温かさと、それを信頼するバンドメンバーの空気感みたいなものが伝わってきました。
後半はボーカル篠塚さんのMCもたっぷり。きっとものすごく言葉を大事にされる方なんだろうというのはTwitterからも相当伝わってきましたが、そのイメージ通り、丁寧に、丁寧に言葉を選びながらMCをする姿が印象的でした。
どれだけライブを重ねても「自信がないんですよね」と言い、自らの活動を「自己表現に逃げている」と評するその姿が僕自身に重なり、どんどん感情移入していきました。
アンコール(という名のフリースタイルな延長戦)を含め、無料ライブにもかかわらず3時間近くの大ボリューム。しかし時間の長さを感じさせない、濃密な3時間でした。
今回のライブは、コロナの影響でキャンセルが相次ぐ(しかも善意でキャンセル料無料にしたらキャンセルが殺到してしまった)状況となった鑪ら場を救うべく行われました。本来であればこの日も別のライブが予定されていたところがキャンセルになり、その枠を利用したライブでした。
このご時世、ライブを開催することも中止することもどちらが善なのか悪なのかも分からず、非常に難しい状況です。しかし、今自分たちよりもまずライブハウスという空間を残すべく立ち上がった彼らの決断に、僕は大きく心を動かされました。
実際に鑪ら場に足を運んで分かりました。彼らが鑪ら場という空間をここまでして守ろうとしている理由が。
もちろん、この場に足を運んだ人だけが素晴らしいのではありません。それせかの音楽を守りたいから、今はライブハウスには行かない、という決断をした人もいるようです(Twitterで見ました)。これも素晴らしい決断。
心ばかりですが自分も募金させてもらいました。本当に素晴らしいライブハウスです。少しでも力になりたい、守りたい、そう思わせてくれるライブハウスです。
鑪ら場にも、アコースティックじゃないそれせかのライブにも、また足を運びたいと思います。
良い音楽と空間に出会わせてくれて、ありがとう。