「む」の境地

旅と音楽とまぜそばと

【18きっぷ期間外】大糸北線の“日常”を見に行く(2024/4/20)

ブログランキング・にほんブログ村へ にほんブログ村 旅行ブログへ にほんブログ村 旅行ブログ 個人旅行へ にほんブログ村 地域生活(街) 中部ブログへ にほんブログ村 地域生活(街) 中部ブログ 長野県情報へ

長野県と新潟県を結ぶ鉄道路線はいくつかありますが、その中でも特に鉄道好きの注目を集めるのが、JR大糸線。特に長野県小谷村の南小谷駅から北の区間は全国トップクラスの赤字路線と言われています(以下、正式名称ではありませんが「大糸北線」と表記します)。

当ブログでは以前も大糸北線について触れたことがありましたが、このときは青春18きっぷ期間ということもありかなり混み合っていました。どこかのタイミングで18きっぷ期間外の大糸北線に乗って現状を確かめたいと思ったので、今回行ってきました。

▽▽過去の記事▽▽

www.sanmuofmusan.com

今回の乗車日は2024年4月20日(土)。春の18きっぷシーズンが終わり、ゴールデンウイークを翌週に控える、貴重な「普通の土曜日」です。そんな土曜日の大糸北線の様子を早速見ていきましょう。

往路:南小谷12:07→糸魚川13:06

まずは往路。南小谷駅からお昼の列車に乗ります。

南小谷駅

JR西日本区間だが、南小谷駅がJR東日本管轄なので東日本仕様の乗車券

この列車の特徴としては、南小谷駅発の大糸北線で唯一、特急あずさ号との接続があることです。新宿を朝8時に出たあずさ号が11:59に南小谷に到着し、この列車に接続するダイヤです。首都圏から大糸北線を目指す鉄道好きにはちょうど良い時間帯となります。

列車のドアは発車の20分以上前から開いており、あずさ号の到着前には10名ほどの乗車。この時点では座席にも余裕があります。

大糸北線は基本的に1両

特急あずさが入線

この日は5分ほど遅れてあずさ号が到着。ということでこの列車の発車も遅れたわけですが、予想通りあずさ号からそれなりの人数が乗り換え、こちらの乗客数は30人ほどに。1両編成なので立ち客も出る状況となりました。

ちなみにこの約30名の内訳ですが、鉄道ファンと思しき風貌の人たちが6割ほど、それ以外の観光客が3割ほど、地元住民と思われる人たちは1割程度といった感じがしました。東アジア系の外国人観光客の姿もありました。

通勤電車ほどの混雑だった18きっぷシーズンと比べるとたかが知れている乗客数ですが、もっと閑散としている予想だったので少し驚きました(失礼)

平岩駅付近に広がる姫川温泉

この列車の途中駅での乗降客数はこんな感じ↓
乗車:北小谷1名、根知1名
下車:中土3名、北小谷3名、根知1名

最初の2駅である中土と北小谷でまとまった下車があったことにより、北小谷から先は立ち客はなし。糸魚川が近づいても乗車はほぼなく、1両で十分な乗客数のまま大半の乗客が糸魚川まで乗り通し、という結果になりました。

ちなみに往路のハイライトがこちら。途中で列車の前にシカが現れたようで、一斉に前方を見る乗客たちです。

シカを追い払う警笛に乗客たちが一斉に反応

山間部の路線では、線路上にシカが現れることは珍しいことではないので、こうした乗客の反応からも地元以外の人が多いことがうかがい知ることができました。

糸魚川駅周辺をまち歩き

すぐに折り返すのも勿体ないので、帰りの列車を1本遅らせて、糸魚川のまちを散策です。

糸魚川駅

糸魚川駅の北側は、雁木作りのアーケードが広がります。融雪パイプの水で赤茶けた道路も相まって、日本海側に来たことを強く感じられる景色が好きで、定期的に長野から訪れています。

www.sanmuofmusan.com

以前にも糸魚川のまち歩きの記事を書いたので詳細はそちらに譲りますが、今回のまち歩きの様子も少しご紹介したいと思います。

まずは日本海展望台。その名の通り日本海が目の前にどーんと広がる光景は、海なしの長野県民にとっても実は意外と身近なものだったりするのです。

そして意外かもしれませんが、能登半島の先端は海を挟んだ対岸のような位置関係にあります。つまり元日の能登半島地震で甚大な被害を受けた珠洲市などもそれほど遠くなく(直線距離で60~70kmくらい?)、おそらく糸魚川のこの場所にも津波が到達したのでしょう。そう思うと、目の前に広がる美しい海が急に恐ろしい存在に思えました。

日本海展望台から眺める海。空気が澄んでいれば能登半島も見えるのかも

塩の道の起点にも足を運びました。道路や鉄道が整備される前の時代、海のない信濃の国へ塩や様々な物資を運ぶスタート地点。現在の大糸線のルートが、古くから大事な道であったことを示す貴重な存在です。

ここから信州へと様々な物資が運ばれた

塩の道の説明

塩の道の歴史的価値を再認識してから大糸線の現状に触れるとどんな気持ちになるのか…散策を終えて帰りの大糸線に乗ります。

復路:糸魚川15:13→南小谷16:15

10分ほど前に列車に乗り込むも、この時点で乗客はわずか3人。接続の北陸新幹線はすでに到着済みで、在来線のえちごトキめき鉄道からもこの後に到着列車がないため、往路と違い出発間際に乗客が増える見込みもあまりありません。

この状態で発車するのか…?

最終的に、列車は自分含め乗客7名で発車。往路と比べてもかなり寂しい車内です。
ちなみにこの列車には、鉄道ファンと思しき人たちはいませんでした。外国人を含む観光客3名、地元民3名といったところでしょうか。

この列車の1本前の列車は、終点の南小谷から特急あずさ号や臨時快速リゾートビューふろさと号に接続するため、鉄道ファン需要はほぼそちらに集中するのでしょう。結局のところ鉄道ファンの乗車有無で乗客数が左右されている状況なのは、改めてこの路線の厳しさを感じます。

そういえば大糸北線はJR西日本なのに、往復とも他社の切符だ

とはいえこの状況で風景が撮りやすかったので、復路は沿線の景色をお届けします。

糸魚川市内の糸魚川~根知間については、少ないなりに建物が立ち並ぶ区間です。まあ、それで利用者が多いのかというとそうでもないんですけどね…

姫川駅前の住宅街

で、大糸北線のメインといえば、県境越えの根知~小滝~平岩~北小谷間。ここははっきり言ってほとんど人が住んでいません。建物がほとんどない、山と川と発電所とスノーシェッドがひたすら続く区間で、正直言って人が乗ってくる方が驚くレベルです。実際、乗車した列車はこの区間での乗降は一切ありませんでした。

この区間の車窓を一言で例えるなら「虚無」

よく線路を通したよな、こんなところに

とにかく、このような景色が2,30分に渡って続くわけです。しかも、場所によっては列車の速度は25km/hまで下がり(鉄道ファン用語で「必殺徐行」というやつです。気になったら調べてみてください)、たまに見える建物もほとんどが廃墟。速達性も利便性も皆無なこの路線が存在していることがただただ奇跡としか言いようがありません。

南小谷に着く頃には、乗客は5名に。自分以外の4人は接続する普通列車・信濃大町行に乗り換えたため、南小谷駅での下車客は1名ということになりました。決して大きな駅ではないといえども、小谷村役場のある村の中心駅としてはあまりにも寂しいですよね。

「誰のため」が見えにくい状況

今回は、土曜日日中の大糸北線の様子を見てきましたが、時間帯によっては鉄道ファンの姿もほとんど見られないことがあるということに驚きました。

乗客5名の車内

まあ当然といえば当然なのでしょうが、大半の場合において鉄道ファンだって観光客なわけであって、宿泊や乗り継ぎの列車の都合があるはずです。そこにハマらなければ鉄道ファンも乗らない、という現実があるわけです。

以前他の記事でも書いた記憶がありますが、大糸北線は鉄道ファンが集まることによって(数少ないとはいえ)一般の乗客の居住性が悪くなりさらに足が遠のく、という側面も出てきていると思います。普通に列車に乗るだけなのにそこかしこからカメラを向けられる状況は、冷静に考えれば気分の良いものではありません。

ただし一方で、さすがに観光需要だけに振り切れるほどの収益性があるのかといえば、それも怪しい。本当に難しい問題ではありますが、もうそろそろどこかの方向性に着地すべき時が来ているのだと思いますね。

今回も、尊敬する鐡坊主さんの影響を受けたトピックになりました。大糸線、また乗りに行きたいと思います。