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【日本一長い路線バス】終点まで6時間半!紀伊半島の山奥を走破する過酷な路線バス旅【奈良交通・八木新宮線】前編

日本一長い距離を走る路線バス(高速道路を使わない)は、奈良県橿原市の大和八木駅から和歌山県新宮市の新宮駅を結ぶ、奈良交通バスの「八木新宮線」です。

旅好き、乗り物好きの方にはよく知られた存在かもしれませんが、今回自分も乗車してみたので、その模様をお届けします。

八木新宮線の概要

奈良交通バスが運行する八木新宮線は、高速道路を使わない路線バスとしては国内最長の、約170kmにわたって運行される路線です。大和八木駅〜新宮駅間のバス停数は驚異の168。終点までの所要時間は6時間半を超えてきます。

また、奈良県の会社でありながら和歌山県南部まで運行されるため、路線図がすごいことになっています。

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これは大和八木駅にある奈良交通の運行系統図ですが、168の停留所の大半は奈良交通としては単独運行。折り返してやっとこさねじ込んでいるという感じです。乗務員や車両のやり繰りも大変そうなのがうかがい知れます。

そんな長距離・長時間の八木新宮線ですが、途中で3回もの休憩があり、場所によっては観光もできる路線になっています。今回は、大和八木駅を朝9:15に出発する新宮駅行の1本目に乗車しました。

大和八木駅を出発

まずは出発前の大和八木駅周辺の様子から。

朝9時過ぎの便ということもあり、大和八木駅近くのゲストハウス笑顔に宿泊しました。奈良県では県の宿泊割「いまなら。キャンペーン2022プラス」が2023年2月末までの予定で行われており、なんと全都道府県の方が対象となっています。

あまり観光する時間は取れませんでしたが、大和八木駅周辺は古い街並みが残っているところも多く、街歩きと絡めるのも面白そうです。

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徒歩7,8分ほどで大和八木駅へやってきました。

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八木新宮線は南口のロータリーから出発。すぐ脇に奈良交通の営業所があり、こちらで「168バスハイク乗車券」を購入します。営業所は朝10時からの営業ですが、9:00~9:15に限り「168バスハイク乗車券」の購入が可能です。

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バス自体は現金・ICカードで乗車可能ですが、せっかくなので「168バスハイク乗車券」で乗り込みます。なお料金は大和八木駅~新宮駅の片道運賃と同じ、5,350円です。

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八木新宮線の車内にはトイレがありませんので、乗車前に済ませておきましょう。乗車券うりばの隣にトイレがあります。また食べ物を買えるタイミングも多くはないので、乗車前の購入をおすすめします。自分もコンビニでおにぎりを買っておきました。

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八木新宮線には専用の車両が投入されており、側面・後面に専用のラッピングがされています。後面には奈良・和歌山両県ゆるキャラが、側面には通過する各市町村の紹介がされています。

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車内は2列シートが基本。座席は柔らかく、快適です(6時間乗っても快適かどうかは別として)。普通の路線バスとちょっと違うのは、座席にドリンクホルダーがあること。八木新宮線の専用車両なので、長時間の乗車を前提とした仕様になっているのが特徴です。

9:15、いよいよ大和八木駅を出発です。出発時は12人が乗車。お盆期間中ということもあり、半分以上は観光あるいは乗り通し客のようです。

五條バスターミナルを過ぎて、山岳区間へ

大和八木駅から最初の休憩地点である五條バスターミナルまでは、基本的に市街地区間を走っていきます。新宮駅からの便だとこの区間は高校生の帰宅時間帯にあたるようで、場合によっては混雑する区間です。

大和高田市、葛城市、御所市、などを通り抜け、1時間強で最初の休憩地点・五條バスターミナルに到着。五條バスターミナルはイオン五條店に隣接しており、トイレ休憩も可能です。

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その気になれば食料調達ができないわけではないですが、10分しかないので乗り遅れないように注意しましょう。実際、イオンで買い物をしたであろうおじいちゃんが乗り遅れそうになっていました。

休憩場所ではこの先の所要時間が表示されています。ここまで1時間強。普通の路線バスならそろそろ終点かな~というところですが、まだあと5時間以上乗ります。狂気。

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五條バスターミナルを出ると、いよいよ八木新宮線の本番です。ここまでの平坦な市街地区間から十津川村方面へと針路を変え、山越え区間に入っていきます。

旧西吉野村を走っていると、山の中に似つかわしくないコンクリート橋がときどき視界に入ってきます。

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これは五条駅と新宮駅を結ぶ路線として計画された国鉄五新線の廃線跡です。とは言ってもこの場所を鉄道が走ったことは一度も走ったことはなく、一部区間はバス専用道路として使用されていました。現在ではかなり珍しくなった、路線バス専用道路の名残です。

実際に八木新宮線に乗ってみると分かりますが、この区間に鉄道路線というのはあまりにも条件が過酷です。当時の人々はよく本気で建設しようとしたな…そんな苦労がしのばれます。

www3.pref.nara.jp

バスは五條市をひたすら南下。難所の一つである天辻峠を通過し、次は旧大塔村へと入ります。

大塔村には「星のくに」という施設(道の駅など)もあり、星の見える場所としてアピールしているようです。また、先述の五新線のトンネル跡地を活用した「大阪大学核物理研究センター大塔コスモ観測所」という施設もあります。

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阪本ダム周辺はすれ違いも難しいような細い道が続きますが、ダム湖の景色も美しいため、車窓は飽きません。

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険しくなる地形とは裏腹に、この辺りからはバイパス道路の整備が進んでいる区間も増えてきます。ただしバスは各地の集落を通っていくため、バイパスを少し走っては細い道に入る、を繰り返していきます。

五條市大塔支所を通過すると、八木新宮線のハイライト、奈良県の5分の1の面積を占めるという十津川村へと入っていきます。

路線バス乗車中に吊り橋観光?谷瀬の吊り橋

五條バスターミナルを出て約1時間40分、2ヶ所目の休憩地点・上野地に到着です。ここでは、3ヶ所の休憩地点で最も長い、約20分間の休憩時間が取られます。

上野地バス停から徒歩3分ほどの場所にあるのが谷瀬の吊り橋。長さ297m、高さ54mの、生活用として日本最長の吊り橋なのだそうです。日本一長い路線バスの乗車中に日本一長い吊り橋を渡るの、良いですね。

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八木新宮線の乗客も多くがこの吊り橋を目指しますが、この日はお盆期間中で吊り橋周辺もかなり混雑していたので、運転手さんから「吊り橋を渡ったら間に合わないかもしれません」とのアナウンスがありました。

吊り橋の入口には「危険ですから一度に20人以上はわたれません」との注意書き。

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入口には人数をカウントする係員さんもおり、混雑時は入場規制がかけられます。ちなみに20人を越えたら橋が落ちる、というものではなく(そりゃそうだ)、実際にはもう少しゆとりを持って入場規制がかけられるようです。

ちょうど入場規制にかかることなく、無事に吊り橋を渡ることができました。当たり前ですが、橋の上はめっちゃ揺れます。心して渡りましょう。

橋の近くにはお土産屋さんもあり、地元の郷土料理である「めはり寿司」をゲットしました。

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普通は路線バスで食事することはあまりおすすめしませんが、所要時間の長い八木新宮線ではそうもいきません。というかここまで来るとほとんどが乗り通し客。おそらく皆さん旅慣れたメンバーで食事の事前準備もバッチリ。雰囲気は完全に観光バス。謎の一体感が生まれます。

上野地バス停の出発前、運転手さんから新宮駅まで乗り通すかを聞かれます。それはなぜか。長くなったので、続きは後半で。

(乗車日:2022年8月15日(月))

www.sanmuofmusan.com