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よく通るけどあまり降りないあの駅④ 北陸新幹線・安中榛名駅

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現地に住んでいる方から怒られそうなタイトルですが、特急列車がたくさん通ったり、そうでなくても普段使う路線上にありながら降りたことがない駅ってありますよね。そんな駅を実際にいくつか訪問してみたので、どんな駅かを紹介してみたいと思います。

第4回は北陸新幹線にある安中榛名駅。首都圏と信州・北陸を結ぶ大動脈にありがなら、「そんな駅あるの?」という方も少なくないと思います。今回はそんな安中榛名駅に降り立って、少し散策してみました。

各駅停車タイプも通過?軽井沢の隣にある秘境

安中榛名駅は群馬県安中市にある北陸新幹線の単独駅です。
群馬県最大のターミナル駅である高崎と、観光客の乗降の多い軽井沢の間にありながら、その存在すら知らない、という方もいるでしょう。

それもそのはず。安中榛名駅は北陸新幹線の他の駅と比べても、停車する列車の本数が極端に少なくなっています。上り(東京方面)の時刻表で比べてみましょう。
※休日ダイヤ

・長野駅:49本(かがやき・はくたか・あさま)
・軽井沢駅:30本(はくたか・あさま)
・安中榛名駅:12本(あさま)

全列車が停車する長野駅と比べると、なんと4分の1以下。しかもほぼ各駅停車タイプとして運行されているあさま号ですら、安中榛名駅を通過する運用があるほどです。そんな状況もあり、1日の平均乗降客数はなんと177人(2021年度)という衝撃的な数値を叩き出しています。

1日200人弱しか使わない新幹線駅ってどんなところなんだ?と、気になってしょうがない存在です。

新幹線駅とは思えない静かな駅舎

実際に、安中榛名駅周辺を散策してみます。今回は平日の夜、20:30頃~21:30頃という、とんでもない時間帯に訪れてしまいました。

安中榛名駅はその特性上(後述)、東京方面への通勤に特化したようなダイヤとなっています。そのため、午前中の長野方面、午後の東京方面の列車は特に本数が少なくなっているのが特徴です。

そのため午後に長野方面から安中榛名駅へ向かおうとすると、時間帯によっては一度高崎駅まで向かって折り返した方が早いという場合すらあるほどです。

そこまでして降り立ったものの、そこに待ち受けるのは静寂。ほとんど人の通らない改札口に、わずか3台の改札機が並んでいるだけです。

安中榛名駅の改札口。みどりの窓口は19時で閉店

新幹線の駅なのにコンビニすらありません。駅構内の店舗は、「峠の釜めし」でおなじみのおぎのやが運営する、釜めしと立ち食いそばのお店だけです。それもこんな時間ではもちろん閉店。

「峠の釜めし」の店舗は17時で閉店

暗くて駅名がよくわからない

駅を出ても店舗などもちろんなく、そこに広がるのは静寂。駅舎を撮影しようにも、駅名部分が真っ暗なのでよくわかりません。正直、降り立って5分ほどで「あと1時間どうやってつぶすか…」と真剣に困りました。

なんで作った?

じゃあ、なんでこんな場所に新幹線の駅ができたのか?と疑問が湧くと思います。
ここで安中榛名駅の歴史を見てみましょう。

なぜ安中榛名駅がこんな場所にできたのか?という問いの間接的な答えは、「北陸新幹線が整備新幹線として計画されたから」です。整備新幹線に関する説明についてはここでは省きますが、ここで覚えていただきたいのは「整備新幹線の建設に際しては沿線都道府県も支出が求められる」という点です。

つまり北陸新幹線の建設に際しては群馬県も支出が必要ということです。しかし当初、高崎~軽井沢駅間に駅設置の予定はありませんでした。これではお金を出してもメリットがないと、群馬県は支出の条件として駅設置を要望。しかし線形の都合上、安中市や周辺自治体の中心市街地に駅を設置することはできず、トンネル区間の合間に安中榛名駅が設置されることとなったのです。

住宅街としてのポテンシャル

さんざんdisったような物言いになってしまいましたが、ローカル線などでよく取り上げられる、いわゆる「秘境駅」と決定的に違うことが一つあります。それは、人家に明かりがあることです。

確かに、安中榛名駅自体は静寂に包まれていましたが、駅周辺に全く人がいないかといえば、そうでもありません。駅周辺は宅地造成がなされており、その造成も順調とは言い難いとはいえそれなりの居住者がいるのも事実。

よく見ると明かりのついている民家も多いので、その点では夜の散策も少しは安心します。まあ、暗いことは変わりないんですがね。おかげで、住宅街の全景を撮ろうとしたらこんなブレブレ写真になっちゃいました。

この住宅街こそが、安中榛名駅周辺にJR東日本が開発した「びゅうヴェルジェ安中榛名」です。

当初はその何もない立地ゆえにゴーストタウンとも揶揄されましたが、販売開始から13年後、2016年には全601区画が完売したとのことです。新幹線を使えば東京まで1時間強でアクセスできるため、現在でも安中榛名駅の利用者の多くが新幹線通勤者のようです。序盤で触れた極端なダイヤ編成も納得ですね。

実際のところどの程度の定住者がいるかはわかりませんが、駅の静けさとは裏腹にポテンシャルを持った住宅街であることが分かりました。

なかなか降りることはないとは思いますが、北陸新幹線で安中榛名駅を通る際にはぜひその存在を頭の片隅にでも入れておいていただけたら嬉しいです。

(訪問日:2023年3月7日㈪)