今回は、列車で行くことができない、というよりそもそも線路が通っていない、そんな駅をご紹介します。
高遠駅なんてあったっけ?
今回の目的地は、長野県伊那市の高遠駅。
あれ?高遠に駅なんてあったっけ?鉄道通ってないよね?そうお思いの方も少なくないのでは。
高遠といえば、桜で有名な高遠城址公園があり、観光で訪れたことがあるという人も多いかと思います。とはいえ、高遠駅の存在はあまり知られていないのも事実でしょう。
先に答えを言うと、高遠駅はJRバスの通る「自動車駅」です。そんな高遠駅への訪問記と、自動車駅について、少し書かせていただきます。
JR線からJRバスへ乗り換え
JR飯田線の伊那市駅にやってきました。
伊那市中心部から高遠駅へ向かうJRバス高遠線は、JR伊那市駅か伊那北駅で鉄道からの乗り換えが可能です。
伊那市駅前(厳密には伊那バスターミナル)から発着するバスには他社のものもありますが、JRバスの路線のみ、JR飯田線の駅構内に乗り換え案内が掲示されています。
これだけを見ると、駅を出てすぐにバスに乗れるようなイメージを持ちますが、実際には違います。JRバス高遠線を含め、各バス路線は伊那市駅から徒歩2分ほどのところにある「伊那バスターミナル」の発着です。伊那市駅にもちゃんと案内はあります。
ということで、伊那バスターミナルにやってきました。
伊那バスターミナルは2017年にリニューアルしており、現在はとてもきれいな建物になっています。この暑い夏に冷房のある待合室はありがたい…
飲食コーナーが併設されていたり、フリーWi-Fi完備など、設備もなかなか充実しています。
思ったより小さいバスで高遠へ
いよいよ今回のメイン、JRバス高遠線への乗車です。
思ったより小型の車両がやってきました。桜のシーズンではないとはいえ、観光地の高遠へ向かう路線。さすがにもう少し大きな車両だと思ったのでびっくりです。残念ながら需要がさほど大きくないことが伺えます。
実際に乗ってみても、乗客は自分以外に、お年寄り1名、高校生2名という内訳でした。土曜日の午前中ということで、観光の方も多少はいるものと思っていたので、少し寂しいですね。
※帰りのバスでは、高遠駅で接続する南アルプス方面の登山客の方が加わり、多少乗客数が増えました。
伊那バスターミナル~高遠駅は約25分。運賃は530円です。ICカード等は使えないので、現金での乗車です。整理券の主張が強い。
高遠駅は「自動車駅」
高遠駅に到着です。しっかりと「高遠駅」と書かれています。バスターミナルではありません。まあ、実際はバスターミナルなんですが。
まずは駅構内を観察。
待合室を備えた立派な駅舎です。
構内には窓口もありますが、こちらは2022年春に閉鎖。現在は無人駅となっています。
かつてはバスの切符はもちろん、鉄道との連絡乗車券も買える、正真正銘の”駅”だったそうな。
世知辛い話題をもう一つ。
高遠駅にはトイレがありますが、こちらが2023年8月16日から一般利用ができなくなるそうです。トイレのメンテナンス人員を確保するのも大変なのでしょうか。地方のバス路線網維持も一筋縄ではいかないというのが感じられるものの一つです。
これから高遠駅はどうなっていくのか。その動向を注目していきたいですね。
ところで、この自動車駅とは何なのかを少しだけ補足しておきます。
これはいわば国鉄時代の名残で、当時国鉄は鉄道路線のない地域への輸送の補完として国鉄バスの路線を設定することがありました。この場合、バスも国鉄の路線として扱うので、その路線内にある「自動車駅」では国鉄の鉄道路線を含めて切符を購入できた、というわけです。
この記事を読んでいる皆さんの地域でも、路線バスでJRバスが走っている、という路線は割と少ないと思います。これは例えばJRバス関東のウェブサイトなんかを見ると分かりやすいですが、JRバスの路線バスは様々な地域に散り散りに設定されているため、地域のバス会社と比べると存在感が薄いから、と考えることができます。
地元のバス会社が担う路線とは、その生い立ちも少し異なるわけですね。
高遠城址公園はちょっと歩く
最後に、高遠にいって高遠城址公園に触れないのもアレなので、高遠駅と高遠城址公園の距離感をご案内します。
これが、思ったより歩きます。
当日は日中の気温が35℃くらいあったと思うので、結構しんどかった…
おそらく桜のシーズンには高遠城址公園まで行く便も増えるのでしょうが。城址公園の駐車場は近辺の道路が比較的狭いので、桜の時期は渋滞とかで結構大変だと思います。となると、手前までバスで行く、というのも十分検討の余地がありそうです。
夏の桜のトンネルも、それはそれで味があって良いですよ。ぜひぜひ。