2016年12月に発生した、糸魚川駅一帯で発生した大火災を覚えているでしょうか?
糸魚川市駅北大火。2016年12月22日に発生し、焼損棟数147棟、鎮火まで30時間を要するという大規模な火災でした。ラーメン屋の厨房の火の消し忘れから大災害に発展するというニュースは、非常に衝撃的でした。
今年も12月がやってきました。少し時間があったので、長野から足を伸ばして糸魚川の街を実際に歩いてきました。
雄大で、肌寒い。糸魚川駅。
先日の記事でも紹介しましたが、
直江津から西の旧北陸本線区間は現在、1両編成の気動車での運行というなんとも寂しい状況となっています。
当日のどんよりとした雨模様も相まって、糸魚川到着前からかなりセンチメンタルな気分です。
糸魚川駅の南北の出口はそれぞれ「アルプス口」「日本海口」の名前。名前だけはやけにスケールが大きい。
大火の現場となったのは駅の北側。早速日本海口へ向かいます。
出火現場は駅のすぐ近く。
大火の火元となったラーメン屋跡地へは、駅から歩いて5分ほどです。ネットで調べればその場所はすぐ分かりますが、ここではあえて詳しくは紹介しません。
火元は現在も空き地で、重機が並んでいます。
上の写真は南向きに撮影しているので、奥には木造の建物が残っていますが‥
北側に目をやると、建て替えられた建物と空き地が広がります。
出火当時は南からの強い風が吹いていたことで、北側の建物に大きな被害をもたらしたことが分かります。
「不自然に多い」公園と、途切れた雁木が示すもの
火元から少し北側に向かうと、駅北広場「キターレ」が見えてきます。
キターレは、2020年4月にオープン。イベントや物販で利用できるホールや、シェアキッチンとしても利用可能な厨房を備えるほか、緊急時の一時避難場所としても機能します。
エントランスでは、大火の際の写真や遺留品の展示が行われ、当時の被害の大きさを学ぶことができます。
こちらの展示内容については、糸魚川市のホームページ上でも同じ内容を見ることができます。火災の熱で曲がった酒瓶や燃えた文化財など、ショッキングな写真も多いですが、一見の価値ありです。
実際に一帯を歩いてみると、小さな公園が 点在しているのがわかります。
これらの公園は、
火災の燃え広がりを防ぎ、災害時に一時避難するための防災広場を被災地内8か所に整備しました。平時は市民公園として住民や来街者の集いや憩いの場となります。
(糸魚川市ホームページより)
という扱いになっているのですが、要はこれらの場所が"空いてしまった”という言い方にもなるのだと思います。
実際、街を歩いてみて気づくことがあります。
その一つが「雁木(がんぎ)」。新潟県の商店街などで見られる雪よけの屋根なのですが、当然これらも火災によって一部消失しました。
もともとは商店街に途切れることなく続く雁木ですが(でないと雪よけの意味が薄れる)、家屋等の再建にあたり、費用の問題もあり雁木なしで再建を行ったところが目立ちます。そうした理由で、再建後の街並みは雁木が散り散りになってしまって、景観としても変わってきてしまっています。
とはいえ、まずは生活が優先。いくら景観のためとはいえ、そうしたものの再建が後回しになるのも無理はありません。
途切れ途切れの雁木、不自然に広がる小さな公園…そうした一つひとつの要素が、この大火の復興の難しさを物語っています。
今に続く、あまりにも難しい”扱い方”
この大火については、もう一つ難しい問題があります。
それは、火元がはっきりしていること。それも完全な過失であること、さらにそれが特定の店舗(個人)であることです。
それゆえに、Wikipediaの大火に関するページでも、火元に関する記述については特に細心の注意が払われているようです。
出火元の人物と被害者の名前は載せないでください。出典に名前が含まれる場合は個人名を出さず、伏せ字にするなどして記載してください。
個人名を出した場合、削除依頼の対象となります。
おそらく、これまで出火元に関して数々の中傷的な文言が書かれ、削除されてきたのでしょう。頻繫に修正等が行われるWikipediaにおいても珍しい注意書きだと思います。
火元の店主の完全な過失である以上、批判的な声が投げられることは致し方のないことなのかもしれません。ましてや、周囲の被害状況を考えればなおさら…。
とはいえ、これがもし自分だったら、と思うとゾッとします。
それでも前へ。
少し思い内容にはなりましたが、それでもまちには新しい建物が建ってきているのも事実です。
この大火で全焼した酒蔵「加賀の井酒造」は新しく再建された建物で営業を再開しています。
また、復興食堂なるものも見つけました(時間帯が悪く閉まっていましたが)。まだまだ復興が道半ばであることを、改めて実感します。
自分が住んでいない地域の出来事は、時間とともにどうしても忘れてしまいますが、ときには「そういえばあそこって今どうしているのかな」と思いを馳せてみるのも良いと思います。そして実際に街を歩いてみれば、ネットだけではわからないこともたくさん見えてくることでしょう。