同じ県内を3時間かけて走る高速バス。
3時間も高速バスに乗ったら普通は県外に出てしまいそうですが、南北に長い長野県では、そんな路線が実在するのです。
それが、長野市と飯田市を結ぶ「みすずハイウェイバス」。
同じ県内ながら、両市の間は150kmも離れていて、しかも鉄道では5時間近くかかるため、貴重な交通手段となっています。
しかしコロナ渦で、この路線ももれなく危機を迎えているのです。
県内間の高速バス苦境 アルピコ交通、公設民営化を県に要請へ | 信濃毎日新聞[信毎web]www.shinmai.co.jp
この記事にある通り、貴重な交通手段ではあるものの赤字路線であり、これまではドル箱路線だった東京方面の収益で何とか維持してきたという経緯がありました。
このみすずハイウェイバスは一体どんな路線なのか、飯田に行く機会があったので実際に乗車してきました。
長野側の始終点は長野駅ではなく‥
みすずハイウェイバスの飯田行きは長野市内の昭和通りバス停が始発、長野行きは長野県庁が終着となっています。
始発と終着が異なるのは市内のルートの違いで特に深い意味はないのですが、大事なのは長野駅発着ではなく県庁まで走っていること。
これは個人的な見方ですが、当たり前ですがどれだけ大きい県であっても県庁は一つですから、長野県庁絡みで長距離の県内出張があるんだとか。そういうことも絡んでいると思います。
アルピコ100周年記念塗装
始発の昭和通りからバスに乗り込みます。
アルピコ交通の100周年記念塗装。...100周年がこんな激動の年となるとは。なんとか持ちこたえて欲しいです。
車内は4列シート。充電とフットレストもあります。
県内移動といっても3時間超の長旅。フットレストで足を伸ばせるのはありがたい限りです。
ちなみに、乗車券はあえてネット購入ではなく、長野バスターミナルの乗車券窓口で購入してみました。
長野バスターミナル乗車券窓口は、2020年11月末をもって営業を終了します。その前に一度窓口で買ってみたかったのです。長野バスターミナルについて書いた記事はこちら↓
長野⇄飯田だけじゃない。地域間交通としての役割
こちらがみすずハイウェイバスの時刻表。
高速バスとしては異常なほど多いバス停の数が特徴です。
https://www.alpico.co.jp/traffic/datas/files/2020/06/09/338200c63962f56b6adb8d2ef54f24a0f359e286.pdf
長野•飯田の各都市間のみならず、松本•岡谷•伊那•駒ヶ根などの都市間の利用も可。実は長野•松本間のみの利用ということもできます。ただし長野•飯田以外は高速道路内に設置のバス停発着につき、中心市街地への乗り入れはないので注意。
今回の乗車時も長野駅発車時は5名ほどの乗車でしたが、長野道松本や長野道神林での乗車が多かったです。
神林は降車の方もいました。
松本や神林はバス利用者用の大きな駐車場が用意されているので、パーク&ライドでも一定の需要があるのかもしれません。
長野道と中央道の接続点である岡谷JCTからは諏訪湖も見えます。
その先も長野道・中央道には多数のバス停があり、特に中央道の伊那・駒ヶ根の各インターチェンジのバス停ではそれなりの降車がありました。
中央道の各バス停はとても年期が入っています。京王バスが「京王帝都」ですからね。
京王電鉄から「帝都」が抜かれたのが1997年か98年のころだそうなので、最低でも20年以上はこのまま使われていますね。
…というか、アルピコ入ってないじゃん!
まあ100周年といってもアルピコ交通としてはまだ10年目ですから仕方ないですね(諏訪バスがアルピコ交通に吸収されています)。
それとみすずハイウェイバスには伊那バス・信南交通も運用に入っています。今回はアルピコ主体になっていますが。。
始発の昭和通りを8:35に出て、飯田駅に到着したのはお昼前。3時間以上かかります。
長野IC~飯田ICはまっすぐ行くと2時間程度の距離ですが(それでも長い)、30個近くの停留所があり、かつ一部バス停はいったんICを出て立ち寄るパターンがあり、直行という観点からみれば結構ロスタイムがあるのも事実です。
ただ昔からこれだけのバス停が設置されているということは、裏を返せばそれ以外の交通手段がいかに不便か、ということもあるでしょう。
正直、東京に行くのと所要時間は変わりません。いかに長野県が大きいかを実感できるバスです。
地域間交通を取り巻く難しい状況
本来ならば1日8往復の設定がある長野~飯田間ですが、コロナの影響で4往復が運休となってから、現在でも4往復体制が継続されています。
実際に乗った限り、よほどの乗客増がない限りはこの状況が続くのだと思います。平日というのもありますが、長野市内~飯田市内を乗り通したのは自分一人でした。
とはいえ、並行するJR飯田線の輸送力が脆弱ななかで、伊那地域で自家用車を持たない人にとって重要な県内移動の手段であることは間違いありません。
東京路線の収益があったとはいえ、路線単独では赤字が続くなかでも民間企業として路線を維持してきたことは評価される必要がある、ということは今回乗ってみて実感しました。
公設民営化には様々な意見があるかもしれません。それでも何とか持ちこたえて欲しい。
最後は長々となってしまいましたが、とにかくみすずハイウェイバスの今後に注目です。
(乗車日:2020年9月18日(金))