青春18きっぷを使って首都圏から長野に来る方は、多くが中央本線を使うかと思います。
というのも、かつて関東~長野へのメインルートであった信越本線経由(群馬回り)のルートが、北陸新幹線開業で在来線が寸断されてしまったからです。
遠回りになってしまう中央本線回りのルートを楽しく(苦しく?)させる長距離普通列車があるのをご存知でしょうか。それが、中央本線を走る普通列車「441M」。
その異常ともいえる移動距離から”拷問””地獄”などと表現され、界隈ではよく知られた存在となっています。
都内から長野市へ直通する唯一の普通列車
441Mは高尾駅から長野駅を直通で結びます。高尾駅は東京都八王子市にあり、東京都内から長野市まで乗り換えなしで向かうことのできる唯一の普通列車となります。
走行距離は245km、所要時間は4時間44分にもおよび、その時間を新幹線と比較するとこんな感じとなります。
(参考)441Mと新幹線の所要時間を比較すると…
中央本線・篠ノ井線(441M) 高尾14:09→長野18:53(4時間44分)
東海道・山陽新幹線(のぞみ1号)東京6:00→小倉10:36(4時間36分)
なんと、441Mが走っている間に東京を発った新幹線は九州に入ってしまう、ということになります。
そんな441Mとはどんな列車なのか、実際に乗車してみました。
ロングかクロスか、それが問題だ
この441Mに乗車するにあたりとてもとても大きな問題となるのが、「ロングシートの車両か、クロスシートの車両か」というものです。
クロスシート(この場合は、ボックスシートという方が適切でしょうか)であれば、時間は長いとはいえ飲み物を飲んだり軽食を食べたりというのもしやすいのでしょうが、これがロングシートとなればそれはつまり通勤電車。落ち着かないまま5時間弱を過ごすことになります。とても長時間乗車には適していません。
ロングorクロスのどちらの車両が来るかは、当日乗ってみなければ分かりません。
幸い今回は、クロスシートのある車両に当たりました。これで勝ちです。
普通列車5時間耐久レース開幕。対戦よろしくお願いします。
— むーさん/スーさん@まち歩きライター (@musan_tr_gh) 2021年8月5日
ロングシート回避で勝利を確信 pic.twitter.com/92ovpLIGCe
平日の昼間ではあるものの、高尾駅からはそこそこの乗車率で出発。
とはいえ隣の相模湖駅で多くが下車したあとは、山梨県内は比較的空いている区間が続きます。
ボックスシートにも他の人が乗ってこないので、ここぞとばかりに足を伸ばします。
高尾から甲府盆地に入るあたりまでの区間は、山の谷間を縫っていくようなところを通過していきます。
個人的に好きな景色は鳥沢~猿橋間にある鳥沢鉄橋。桂川をかなり高さのある鉄橋で跨いでいきます。
橋からの眺め!からのトンネル!
— むーさん/スーさん@まち歩きライター (@musan_tr_gh) 2021年8月8日
が好きな区間です
(中央本線 鳥沢~猿橋) pic.twitter.com/rrcfhQq50C
大月の次、初狩駅付近からはリニア新幹線の実験線が見えます。
”俊足”の普通列車
さてこの441Mですが、 もう一つの特徴として「速い」ということがあります。
普通列車で速いというのはどういうことか?と思うかもしれませんが、一番の要因は特急列車の退避などによる長時間停車の少なさです。
高尾~長野間は全区間が1時間or30分間隔で特急列車が走るにもかかわらず、特急列車の通過待ちによる長時間停車は甲斐大和(約8分間)の一度きり。その他では小淵沢・松本での3分間の停車がある程度です。
※その他、信号場での退避があります。それは後述。
唯一の長時間停車である甲斐大和到着は、高尾出発の約1時間後。まだ体へのダメージが小さい序盤での休憩タイムです。つまり、この先約4時間は車外にほとんど出られないという…。
せっかくの停車時間ですが、甲斐大和駅構内にはコンビニ等はありません(飲み物の自販機はあり)。高尾からの乗車前に諸々購入されることを強くおすすめします。
ここでは新宿を14時に出発したあずさ29号に抜かれます。
新宿14:30発のかいじ31号、同15時発のあずさ33号については、それぞれの終着である甲府・松本まで441Mが逃げ切るダイヤとなっており、このあと通過待ちが発生しないことが、441Mの速さの要因となっています。
セブンティーンアイスの救い
甲府盆地に差し掛かる頃には時刻は15時半を回り、そろそろ甘いものが欲しくなってきます。
ただし先述の理由でお菓子を調達するタイミングがなく、頼みの甲府駅ですら1分停車につき買い物は期待できません。
そんな状況の助けになるのが、小淵沢での3分停車です。小淵沢駅でもコンビニに行く余裕はありませんが、ホームにセブンティーンアイスの自販機がありました。
やったー!
ちなみに、同じ車両で高尾から乗り通していた最後の方が、小淵沢で降りていきました。その他、大月から長野まで乗った方がいたようですが。
富士山・八ヶ岳・北アルプスを一気に
話が前後しますが、これだけの距離を走ると、車窓に映る山も変化していきます。
まずは富士山。
山梨市あたりから、ブドウ畑越しの富士山(の先っちょ)が見えます。
富士山のフォルムを綺麗に見たいのであれば、甲府を過ぎて塩崎付近がおすすめ。ただしちょっと角度がしんどいです。
韮崎を過ぎると、今度は右手に八ヶ岳が見えてきます。
(進行方向左側の席だったので、写真がありません…)
少し雲が出て見えなかったのですが、左側には南アルプスも広がります。
松本を過ぎた頃には北アルプスも見えてきます。都内から出発した普通列車でこの景色を味わえるというのも、441Mの魅力と言えます。
姨捨の夜景が見えたら…
茅野を過ぎたあたりから、高校生の姿が目立ち始めます。時刻は17時を回り、ここから先は松本・長野地域の通勤通学の足としての側面が濃くなってきます。
松本駅に到着。停車時間は3分ですがホームにNewDaysがあり、出発から3時間半にしてやっと買い物のチャンスが訪れます。場合によっては早めの夕食でも良いかもしれませんね。
長距離列車とはいえ松本で乗客はかなり入れ替わり、長野へとラストスパートです。
日本三大車窓の一つである姨捨に差し掛かるのは18時過ぎ。夏場であれば夕暮れが、冬であれば夜景が期待できます。車内にも写真を撮る人がちらほら。
姨捨はスイッチバック駅のため長時間停車の列車も多いのですが、441Mはすぐの発車。さすがの俊足。長野駅もすぐに到着…と思いきや、次の稲荷山駅の手前で謎の停車。
実は姨捨~稲荷山間にはもう一つ、「桑ノ原信号場」というスイッチバックが存在しているということを、このとき初めて知りました。
桑ノ原信号場では反対方向の特急列車を退避(単線区間のため)。
停車時間としては441Mでは甲斐大和を上回って最長かもしれません。まあ、列車からは降りられませんが…。
事前に調べて快適な缶詰め旅を
18時53分、長野駅に到着。
直角ボックスシートに約5時間、序盤で腰が痛くなって心配になりましたが、時期的なこともあってかそれほど混雑もせず、割と快適に過ごせました。
最後に、441Mの長時間停車のおさらいです。
- 高尾 14:09発
- 甲斐大和(8分間停車:飲料自販機だけ)
- 小淵沢(3分間停車:飲料・アイス自販機あり)
- 松本(3分間停車:ホーム上にコンビニあり)
- 長野 18:53着
基本的にゆっくり買い物する時間がないので、飲み物や食べ物は事前調達がおすすめです。自分は高尾駅前の京王ストアで調達しました。
戦略を立てて快適な鈍行旅を!
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